苦恋症候群
あたしの頬を撫でて、ふっとヤマくんが笑う。



「大丈夫。俺、気は長い方だから。おまえが三木のことを忘れて俺と向きあう覚悟ができるまで、待つから」

「や、やまくん……」

「……だから、俺をすきになれ」



やさしく、力強く。あたしの耳に残ったその言葉に、泣きたくなる。


なんなのよ、もう。今まで見てきたヤマくんも、抱かれて知ったヤマくんも、たった今あたしを口説いているヤマくんも。

なんでこの人、こんなあたしにやさしいの。たまに意地悪なくせに、やさしいの。



「や、ヤマくんのばか……そんなこと言われたら、それだけで、意識しちゃうじゃん……」

「意識しろよ。そのために言ってるんだから」



そう言って無邪気に笑った表情も、今日初めて知った彼のひとつ。

なんだかやられっぱなしなのが悔しくて、ちょっぴりうらめしげにヤマくんを見上げた。すると彼は思いきりあたしの耳元にくちびるを寄せ、ささやく。
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