苦恋症候群


◆ ◆ ◆


「あ」

「あ」



不覚にも、視線の先の人物と声が重なる。

やっぱりなんだかなあ、と思いながら私は前を向いて、カフェオレのストローを口に含んだ。

こないだと同じように……だけど今度は後から来た三木くんが銀色のドアを閉めて、私から少し離れた手すりに寄りかかる。



「お疲れさまです、森下さん」

「お疲れさま。……今日もタバコ?」

「いや、違います」



その言葉に少し興味を引かれ、ちらりと左隣の彼へ視線を向けた。

三木くんは手にしている白いビニール袋から、ゴソゴソ何かを取り出そうとしている。



「ぶっ、」

「なんですか。汚いですよ、森下さん」

「けほけほっ……うん、あの、さすがに予想外だったから」



さりげなく冷たい眼差しをくれる彼が手にしているのは、コンビニに売っているシュークリームだった。なめらかなカスタードクリームがおいしくて、私もたまに買うやつだ。

まさかこの鉄仮面くんが会社で堂々とスイーツを食べるとは思ってなかったから、取り出すのを見た瞬間思わず吹き出してしまった。

いや、この屋上に来てる時点で『堂々と』ではないのか。
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