苦恋症候群
「頭疲れると、甘いものが欲しくなるんです」

「ああうん、わかるよ。すごくよくわかる」



今自分の横で、社内でも仕事ができてイケメンと評判の後輩くんが、相変わらずの無感情な目をしながらシュークリームをほおばっている。

なんてシュールな画だ。ぜひとも写メにおさめておきたいけど、さすがに怒られそうだしな。


そんなくだらないことを考えながら、ふーっとため息を吐く。

そのまま、空を見上げた。



「三木くんはさ。彼女とか、いないの」

「『とか』ってなんですか。たとえば不倫相手とかですか」

「……きみはもう少し慎みを持とうね」



まったく気遣いが感じられない彼に、がっくり脱力してしまう。

そんな私に、意外にも三木くんの方からまた会話を続けてきた。



「まあ、彼女と呼べるものは、いないですね。もうしばらくずっと」

「へぇ、意外。三木くんモテそうなのに」

「モテるのと、彼女がいるかどうかは、また別の話だと思いますけど」

「そうですか……」



こわい、このコこわい。まず自分がモテるってちゃんと自覚してるし、それに『彼女と呼べるもの』って。

なんとなく、その言葉の裏には『彼女ではないけど性欲処理係』的な存在が潜んでいそうで、すごくおそろしい。
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