まだあなたが好きみたい



ぎりぎりと火花の散る睨み合いはつづき、窪川が忌々しげに舌を鳴らした。




「可愛くねぇ女」



「そりゃどうも」




窪川の拳が不穏にふるえる。




「ふんっ、心配して損した」




心配、という言葉にぐらりと来るものを感じながらも、菜々子は、




「電車になんか乗ってるからよ」


「悪いのかよ。おまえだけのもんじゃないだろ」


「街に出て遊んでたんでしょ? だめねー、自称エースがそんなんじゃあ」


「はっ。遊び? まさか」


「じゃあなに?」


「整体だよ」




整体? 


はて、聞き覚えはあっても、体に関する施設に明るくない菜々子は、闇雲に不吉な予感にとらわれる。




「……どっか悪いの? 腕? 脚? ……頭?」



「せ・い・た・い! 整体だっつってんだろ! 体の歪みを直して、怪我をしにくい状態に整えてもらいに行ってきたんだ!」


「体が歪んでたの?」




窪川は呆気に取られたように菜々子を見た。




「なんて無神経で短絡的な聞き方なんだ。賢い学校行ってるくせにバカなのか? まあ、いい。言ってみりゃあそういうことなんだろうけど、でもおまえのそのひねくれ腐った神経に比べたらぜんぜんかわいいもんだっただろうがな」



「それ、ぜんぜんおもしろくないわね」



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