まだあなたが好きみたい

高校に上がって目をつけた男がおまえだと聞いて、さぞかしお似合いのカップルだと思った


……それはつまり、眼鏡は以前から俺のことを知っていたということだ。

そして、睦美の性癖を熟知している眼鏡が俺のことを類は友を云々と呼ぶのにはまさしくあの、中田が立てた賭博ゲームを知っていなくてはならない。

匡の全身から血の気が引いた。

胸が、奥底のほうからどんどんと杭を打つように鼓動がはじけ、目眩がする。


(けどどうして。どうして、知ってるやつがいるんだ)


多くの人が知りえている情報は、よくて吉田と、吉田に惚れていた男が俺に騙されたところまでのはずだ。

坂谷の彼女が侵された事実や、それに至るまでの賭けは、彼女の名誉と尊厳を守るため、内々で決め事を立てたはずだった。


「こいつ、慣れ切ってただろ?」


一瞬何を言われたのかわからなかった。

眼鏡が例の事件を知っていると知らされた事実に戦慄して、思考が鈍磨している。
救いの眼差しを感じながら、今もって過ぎ去らない衝撃の余波に身動きが取れず、見える景色に心がついていかない。

睦美の存在など、ほとんど忘れかけている自分がいた。

睦美は……そう、妙に落ち着いたやつだと思ったのは、間違いない。

だからといって、それが眼鏡の言うほどの場数を踏んでいる好き者だとは思わなかったけれど。

単に、処女ではないという余裕がそうさせるのだと思った。

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