まだあなたが好きみたい
「おまえ、なんでそれ……」
「ごめん。わたしあの頃、本当に性格悪かったの」
睦美は、もう帰ってこないと諦めていた黒猫を放ってよこした。
「バカなことしたのに、そんなのくれるなんて、ちゃんと脈あるんじゃん」
「そういうんじゃねぇんだよ」
とは言いつつも、声にはうぬぼれな期待がちらつくのを抑えられない。
吉田にはもう会わないと言われているが、睦美の言葉には俺もまんざらではない思いがある。
「わたし、応援なんかしないよ」
帰ろうとしたとき、部屋の前まで見送りに来た睦美が言った。
「いいよ。おまえはまず自分のことを第一に考えろ」
「そうじゃなくてさ。ほら、わたしがしたら、縁起が悪いから」
は、と匡は一笑に付す。
「ばーか。そんなわけあるかよ」