まだあなたが好きみたい

終わらない冬なんて…


卒業式が間近に迫る二月も末のこと。

踏み固められた雪の上にはまた新たな雪が降り積もり、空との境目のないどんよりとした色彩が世界を染める。

卒業式と聞けば連想する花は桜だが、この町では梅もつぼみを結ばない。春はまだまだ遠いもの。

その証拠に。

先ほどまで小ぶりだった雪が、狂ったように激しさを増して、今は100メートル先の視界も覚束ない。

これもきっと、休日に友だちの家で勉強をするなどという信じられないほどリア充な科白を有正の口から聞いたせいだと思う。


(そりゃまあ? いいことだし、喜ばしいけど、……さすがに飛ばしすぎじゃない?)


あまり口出しはしたくないけれど、踏みすぎたアクセルはどうしたって危険が多い。

わたしが慎重すぎるだけなのかもしれないけれど、有正はずっと人を斜めに見て過ごしてきたから、遠慮や妥協、空気を読むことありきの濃厚な仲良し空間に踏み込んで、うまいこと己を制御できているのか、不安は尽きない。

スタートダッシュで燃えすぎて、以前より頑なになってしまったら、それもきっとわたしのせいだ。


(どうか、有正が今日という日をうまく乗り切れますように……!)

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