氷の卵
それから、夏が来て、また啓と出会った秋が来た。


その間に、2人の女の子と、1人の男の子が張り紙を見てやってきた。

男の子は夏休みだけ。
女の子は一人が春休み。
もう一人は不登校の高校生で、普段の日に働いてくれていた。


朝早くから終業時間まで、一生懸命働く彼らの姿は美しかった。


啓と香織さんを一度に失った私の心も、次第に平静を取り戻していた。

やはり、私にはお花屋さんが合っているのかもしれない。

誰のためにとか、そんなこともういい。

ただ、花と向き合うことで、私は穏やかに日々を過ごすことができる。


身を滅ぼすような恋はもういらない。
一緒にいても寂しいだけの、悲しい恋もいらない。


みんな、みんな。

みんなきっと、私の前からいなくなる。

大事だと、離れたくないと思えば思うほど。

いままでもずっと……そうだったから。


だから私は、忘れなくてはいけない。


本当は片時も忘れたくない、あなたの面影を。
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