KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―
水を掛け逃げした彼女の消えて行った出入口を、私は口をポカンッと開けて見ていた。
そりゃね、修羅場真っ最中で余裕がないのはわかるよ?
見たら一発でわかる位、見事に喧嘩してたからね。
あれでわからないはずがない。
でもさ、それとこれは別でしょ。
男の方が悪いって言うんなら、別にその男に謝れとは言わないよ?
それは2人の問題であって、他人が口出しする問題じゃあないだろうから。
でも、だからって、私にまで謝らないのはおかしくない!?
だって、どう考えても私自身は完璧な被害者でしょ!?
私だって人間だからミスの1つや2つ位はした事あるし、それなりに誠意さえ見せてくれれば、怒らないって!!
謝ってくれれば笑顔で許すよ?
だから、放置しないで戻ってこよう!!
後始末は、残された男の人がしてくれるにしたって、誠意は大事だよ!!
……って、心の中でいくら叫んだ所で、彼女を呼び戻せる訳もなく、表面上は呆然としながら無言で見送くる事になる。
気が強そうと、よく言われる私だけど、中身は以外にもチキン野郎なんだよね。
こんな時ですら、はっきり不満を言えない自分がちょっとだけ、情けない。