KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―



「いえ、結構です」



慌てて口にしたのは、当然の如く拒否の言葉。

だって、普通、この話の流れで、何のカードかわからないカードなんて貰わないよね?

何のカードかわからないから、使用方法だって知らないし。


下手に貰って、持ってるとまずいものだったりするのも怖い。



「いいから貰ってくれ。それは、シンデレラになる為の特別チケットみたいなものだから」


もう一度、押し返そうとしたカードを、彼は強引に押し付けてくる。

シンデレラになる為の特別チケット?


何それ。超、怖すぎる。



「いえ、本当にいらな……」
「ダメ。それはもう君のだって決めたから」


……は?

いや、ちょっと待て!!

何、その悪徳なセールスみたいなのは!?



「何言って……」
「俺が君をシンデレラにしてあげるよ」


そういってキザっぽく微笑んだ彼が、私に見せたのは、今日買ったばかりなのに、ずぶ濡れになってしまった憐れな私の本。


その表紙にはでかでかと書かれている。





……『シンデレラストーリー』と。

愛想笑いを浮かべていた、頬が僅かにひきつるのを感じる。

そりゃね、確かに憧れてますとも。

その本に書かれているような、甘過ぎる程甘くて幸せな恋愛に。


でも、さすがにこの申し出に素直に「はい、そうですか」とは頷けないって。
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