Voulez vous du chocolat?
「でも俺、もうちょっと学校残ってようかな」
「え、ホント!
……なんでよ?」
つい反射的に顔を綻ばせてしまった。
あわてて冷たい態度をとる。
「んー? だって鹿野サン心配だし。
鹿野サンが作ったチョコレート食べさせられる男子、可哀想じゃん?」
あたしが……心配!?
それってつまり……。
「バカ! あんた一言多い!」
「ごめんごめーん。で、何作りたいの?」
……作るのに、付き合ってくれるってこと?
レシピ本を覗き込む神無月君を無意識に見つめる。
その顔に答えは書いていないけれど……そうだよ、と脳内で誰かが囁く。
こんなことって……あるの?