Voulez vous du chocolat?
「まず、湯銭ね? 鹿野はどうしても鍋にボウルの底付けちゃうみたいだから、お湯もっと張っていいよ」
水道から水を勢いよく出しながら言う神無月君。
不意に"鹿野"なんて呼ばれて……意識してしまう。
「それでもっとチョコレート細かく刻んで。
……違う違う、もっと細く!」
貸して、なんて言って、突然手ごと包丁を握られる。
「ちょ……ッ! 何すんの!?」
「何って……包丁の角度、直し……」
「あッ、危ないじゃん!!」
気づいて、こんなん照れ隠しなんだから。
本気で嫌がってるわけじゃないんだから。
あぁ、そんなこと、死んでも言えない!!
なんで、素直になれないんだろう……。
別に、素直になんてならなくていいけど!