君の命の果てるまで

衝撃

廊下を足音が近付いてきた。

怒られる―――

反射的に身構えてしまう。


ノックの音とともにドアが開いて、入ってきたのは医師だった。

いつもの冴えないおじさんの主治医ではなく、若くてほっそりした先生。


「あ、目が覚めたようだね。気分はどう?」

「……大丈夫です。」


消え入りそうな声で答える。


「入院してから3日も経ってるんだよ。」

「え、3日、ですか?」

「そう。何とか持ち直してくれて、僕もほっとしてるところ。」


素直な人だな、と思った。

それに、怒らないんだ、この先生。


「あの、……面会謝絶ですか?今って。」

「そうだよ。家族以外はね。」


そう言ってから、先生の顔が少し曇ったように見えた。

それがどうしてなのか、私には分からない。


「あ、申し遅れたね。僕は朝田瞭太(あさだ りょうた)です。今回から僕が主治医になったから、これからよろしく。」

「よろしくお願いします。」

「さて、胸の音を聞かせて。どんな理由があったか知らないけど、君が無茶したせいで心臓は大変だ。たぶん、長期の入院になる。それくらいの覚悟はあったよね?」


朝田の優しく諭すような話し方が、なんだか怖い。


「ごめんなさい。」

「僕に謝っても仕方がないよ、お嬢さん。別に、説教する気もないしね。」


そう言って朝田は、少し意地悪そうに微笑んだ。

< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop