ナナイロのキセキ
「彼氏に飽きたらいつでもおいで」という捨て台詞を残して。

「・・・まったく・・・。」

はーっとため息をつく亮一さん。

そんな姿を見ながら、心の中で関口さんに謝罪する。

きっと、本当に、私のことを好きになってくれたんだ。

もちろん、それを歓迎する気持ちにはなれないけれど、去って行く姿に罪悪感も感じていた。

人の気持ちの全てに応えることなんて、誰も出来はしないのだけど。

多分、関口さんがいなかったら、ここまで亮一さんの気持ちを素直に聞くことができただろうか。

ほっとした気持ちとともに、そんなことも感じていた。

「・・・疲れたな。」

私がそんなことを考えていると、横でぼそっと亮一さんが呟いた。


(確かにちょっと、気疲れかな・・・。)


「・・・はい。そうですね・・・。」

合わせるように私がうなづく。

私たちは疲れを意識すると、しばらくの間何も言わずに立ち尽くす。

不意に、亮一さんは思い出したように私の肩を抱いていた手をぱっと離した。

「ごめん。力、強くて痛かったよね。」

「ううん。大丈夫です。」

少し強かったのは、確かに事実だったけれど。

守られているのだと感じて、私はそれが、心地よかった。


(そういえば・・・初めてデートしたときも、似たようなことがあったよね。)


あのときも、私の肩を抱いていた手を、慌てて離して謝っていた。

状況はちょっと、違うけど・・・。

ひとり思い出に浸っていると、亮一さんは私と向き合うように位置を変えた。



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