ナナイロのキセキ
坂下さんが連れてきてくれたところは、ビルの最上階にあるカジュアルフレンチのレストランだった。
(わ!・・・高そうなお店!!)
お店に入り、坂下さんがウエイターに名前を告げると、淡い光を放つ、キャンドルが灯ったテーブルに案内される。
(うわああ!ステキ・・・だけど、私、完全に場違いな気がするんだけど・・・。しかも目の前に坂下さんがいるし!)
私が緊張して固まっていると、坂下さんは適当に料理と飲み物を頼んでくれた。
ワインと料理が届くと、私は順に口に運んでいくが、緊張して味がよくわからない。
(多分、すごくおいしいんだと思うけど・・・。ああ、フォークとナイフって、どっちを右手で持つんだっけ!?)
「牧野さん。」
「は、はいっ!」
完全に緊張でパニックになっている私に、坂下さんの声が届く。
勢いで返事をして見上げると、やわらかい笑顔が目に入る。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ここ、別に本格的なフランス料理の店じゃないし。」
「そ、そうなんですか・・・?」
「うん。マナーなんて適当で平気だよ。オレもそういうの知らないし。」
(そ、そうか・・・。)