ナナイロのキセキ
「へー。そうなんですか。もしかして、甘いものも嫌いですか?」

「いや、それは割と好きだけど・・・。とにかく、コーヒーに何か入ってるのが

許せないんだ。」

「ふふ、そうですか。なんかおもしろいですね。」

飲むたびにゆるりと崩れてしまう、うさぎの顔に寂しさを感じながら。

私は、またひとつ坂下さんのことを知れたことが、何よりもうれしかった。


たわいもない話をして、二人のカップが空になると、

「そろそろ行こうか」と言って、坂下さんは立ち上がる。

私にそのまま待つように言うと、さっと食器を下げてくれた。

そんな何気ない行動に、私はいちいちキュンとする。

「お待たせ。じゃあ・・・行こうか。」

テーブルに戻ってきた坂下さんは、そう言って、私の前に手を差し出した。

「え?」

意味がわからずに私が首をかしげると、坂下さんは、表情を隠すように

グイッとメガネの位置を直しだす。

「えーと、その・・・手、つながないかなと思って。」

「え?」

もう一度、差し出された手に視線を落とす。

「・・・・・・!!あ、は、はい!喜んでっ!」

驚きのあまりすぐに返事がでなかったものの、その言葉の意味がわかると、

私はあまりのうれしさに、勢いよく席を立ってしまった。


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