私たち、政略結婚しています。
「佐奈……、何を考えてる…?」
克哉が私を見下ろしながら訊ねてくる。
「………ううん、何も……」
私ははぐらかすように彼にしがみついた。
「………そっか…」
彼は小さな声で呟くように言うと、再び私の肌に唇を這わせる。
こうして抱き合っていくうちに、克哉が私を本気で好きになればいいのに。
私の気持ちが克哉に伝染すればいいのに。
夫婦でありながら、お互いに胸に抱える思いが違う。
彼は気付いているだろうか。
私が克哉を本当に好きなことに。
でも気付かれたくはない。
彼に受け止める気がないならば、困惑するだけだろうから。
いつまで続くのか。
どこに向かっているのか。
ストーカーに『俺のもの』だと言った、彼の本心は何なのか。
何も分からないまま、私は克哉の体温に今夜も一人、溶かされていく。
彼の熱が、私ほどには上がらないことを知りながらも。