チェンジ type R
 いや、無視し続けてたつもりは無いんだけど……ひょっとしてずっと私に話しかけ続けていたのだろうか?
 声も何も聞こえてはいなかったんだけど――ひょっとしてこうやって隼人くんの姿が見えている時だけしか私には隼人くんの声が聞こえない、ということなのだろうか?

「えーと……とりあえず、無視してたわけじゃないよ?」

 言い訳しても仕方ない。
 隼人くんの怒りを鎮めるために、とりあえず無視していたつもりは無かったことを伝える。
 ……が、この言葉は少しだけ隼人くんの怒りの炎に油を注いでしまったようだった。

(無視してただろ! こっちが何を話しかけても『あれ? 声が聞こえなくなった』とか)

 あれ?声に出してたかな?

(『隼人くんの知り合いに声をかけてしまったらどうしよう?』とか!)

 ん?独り言になってた?

(その度にこっちは『無視すんな!』とか『あれは知り合いじゃねーよ!』とか叫んでたのに……)

 隼人くんはコブシを握り締めてプルプルと震えている。
 表情は心無しか泣きそう、というか涙目になっているような……。

――うーん、こんなに感情表現が豊かな幽霊も珍しい。
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