負け犬も歩けば愛をつかむ。
「え……他の理由?」

「専務に弱みを握られてたり、何か言われてたりしたんじゃないか? 君にプレッシャーかけるようなこと」



私は思わず目を見開いた。



「何で知ってるんですか!?」

「あ、やっぱり」



え……もしかして私、ハメられた?

ぽかんとする私に、椎名さんは神妙な顔で言う。



「専務は俺達のことを良く思ってないみたいだからね。何か裏があるんじゃないかなと思って。やっぱりそうなんだな?」



専務の腹黒い行いに椎名さんが気付いてるというのは本当だったみたいね……。

彼に余計な心配をさせてしまいそうだから黙っていたけど、もう隠していても仕方ない。



「……はい。請求書のことも他のことでも、何か問題があったら、専務は椎名さんに責任を取らせるつもりでいるんです」



観念して白状すると、彼は「そうか」と言い、呆れたように一つ息を吐き出した。



「君のことだから、気を遣って誰にも相談しなかったんだろ」

「おっしゃる通りで……」

「責任感があってチーフに向いてるな。でも、もっと頼ってくれよ、俺のことも」



ほんの少し切なげに眉を下げる彼を見てはっとする。私はまた大事なことを忘れていた!



「そ、そうですよね! 上司に“ホウレンソウ”をするのは基本中の基本なのに、すみません!」



思いっきり頭を下げる私。

こんな私がチーフに向いてるわけないですよ、椎名さん……。

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