負け犬も歩けば愛をつかむ。
ど、どうしましょう。

椎名さんが何を話すのかもとっても気になるけど、想像以上にコックコート姿が格好良くて見惚れてしまう!

黒いズボンに強調された長い脚に、腕まくりした袖から伸びる筋肉質な腕がたまらない。それに、なんだかめちゃくちゃ料理出来そうだし!



「あの、椎名さんって料理出来ます?」

「料理? 簡単なものしか出来ないけど……ってどうした、突然」

「ちょっと今激しく気になって。得意料理は?」

「んー……ゆで卵」

「ぶはっ!」



彼の珍回答に私も吹き出しそうになったけど、今のは私ではない。

休憩室の外から聞こえたけど……まさか。



「あ。やべ」



ドアに駆け寄ってすぐさま開けると、口を手で覆った水野くんを筆頭に、園枝さんと真琴ちゃんが“だんご三兄弟”のような状態で固まっていたのだった。



「み、皆っ……! いつからいたの!?」

「ほんのちょっと前ですよ! 盗み聞きとかしてないですから、そんなには」



「そんなには」って、ちょっとは聞いてたんじゃない!

真琴ちゃんに続き、園枝さんが申し訳なさそうに苦笑しつつ言う。



「入ろうと思ったら二人の声がするじゃない? だから邪魔しちゃいけないと思って」

「そうそう。そしたらマネが不意打ちで面白いこと言うから笑わされたわ」

「水野くん、俺は真面目に答えたんだけど。ゆで卵を作らせたら俺の右に出る奴はいないよ、たぶん」



私の後ろから顔を覗かせ、至って真剣に言う椎名さんに一同爆笑。

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