負け犬も歩けば愛をつかむ。
早く来ようという考えは同じだったらしい皆が揃い、一気に賑やかになる休憩室。

皆も私の風邪の具合を気にかけてくれて、まだ本調子ではないけれど、皆の元気を吸収して気分は上向きになっていく。

そんな私の肩にポンッと手を置く椎名さん。



「頑張ろうな。身体辛くなったら遠慮せずに言うんだぞ」

「はい!」



気合いを入れて返事をすると、彼は笑顔を返して一足先に厨房へと向かっていった。

それを見計らったように、皆が私に群がってくる。



「おい、ちづ! 『話がある』って絶対そーいう話だろ!? いつの間にマネのハートを掴んでたわけ?」

「え!? そーいう話って……違うでしょう! 変な期待させないで」

「いーや千鶴さん、きっと脈アリですよ! さっきのマネージャーの発言の数々はそうとしか思えないですもん!」

「やっぱり聞いてたのね……」



テンションの高い水野くんと真琴ちゃんは、勝手に話を広げて盛り上がっている。

そりゃあ私も、昨日からの椎名さんの言動を思い起こすとうっすら期待してしまう……けれど。

これで違った場合、本当に惨めだしなぁ……。第一、小雪さんの存在だってあるわけだし。


悶々としている私の心情を読み取ったかのように、園枝さんがこんなことを言う。

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