負け犬も歩けば愛をつかむ。
専務は九条さんに対しても毒舌なのね……。

ていうか、彼女のために手を回していたなんて、なんだかちょっと意外だ。



「だいたい僕はやめておけって言っただろう。彼の好きな人に対する想いは、玲華がどれだけ頑張っても揺らがないって」

「そんなのわかんないじゃない! ……って思ったんだもん」



ふぇ~~と再び泣き始める九条さんに、私はますます部屋の中に入るタイミングを失ってしまう。

どうしたら良いものか……と考えていると、専務の冷ややかな声が響く。



「玲華、ライバルの前で醜態を晒してるぞ」

「ふぇ? ライバ、ル……」



はっとして目線を二人に戻すと、至極冷静な表情を浮かべる専務と、泣いた顔すらもお綺麗な九条さんが私を見ていた。

ぎゃ~~バレた!!



「すっ、すみません! 大変失礼いたしました!」



慌ててドアを閉めてしまった私。バカ千鶴、どうせなら今入っちゃえば良かったじゃないのよ!

余計入りづらくなりため息を吐き出していると、しばらくしてドアが開けられた。

現れた九条さんは、目と鼻の頭を赤くしたまま、ムスッとした顔で私を睨む。



「覗き見なんて、趣味が悪いですね」

「く、九条さん! ……ごめんなさい」



腕組みをして嫌味のように盛大なため息を吐き出す九条さんだけれど、私は平謝りするしかない。

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