君想い【完】
病室に入る前に少し息を飲んだ。
302号室は個人部屋と聞いていたが、
中から会話が聞こえた。
ノックをする手が震えた。
「失礼します。」
「誰?」
腕には無数のあざ、
その腕に点滴がしてある。
体は起こしていて、
顔色も悪くはない。
ブリーチで色を抜いた髪は高校生から変わっていないみたいだ。
変わった事と言えば、
頬が痩せこけている事。
顔にある小さないくつもの切り傷。
あっこ先輩のイメージは
派手で怖そうだったけど、
綺麗で大人の女性だった。
でも今は柔らかい表情をしている。
目が優しい。
いつも誰かを睨みつけるような目をしていた。
常に眉間にしわを寄せていて、
目は猫のようにつり上がっていた。
それでも目が大きくて、
いつも完璧な化粧をしていた。
少し厚めの唇はいつもきらきらしていた。
でも今は荒れていて、
くすんだ色をしている。
「あっこ先輩ですか?」
そう疑ってしまいたくなるくらい別人だった。