君想い【完】


病室に入る前に少し息を飲んだ。

302号室は個人部屋と聞いていたが、
中から会話が聞こえた。

ノックをする手が震えた。

「失礼します。」

「誰?」

腕には無数のあざ、
その腕に点滴がしてある。

体は起こしていて、
顔色も悪くはない。

ブリーチで色を抜いた髪は高校生から変わっていないみたいだ。

変わった事と言えば、
頬が痩せこけている事。

顔にある小さないくつもの切り傷。

あっこ先輩のイメージは
派手で怖そうだったけど、
綺麗で大人の女性だった。


でも今は柔らかい表情をしている。

目が優しい。

いつも誰かを睨みつけるような目をしていた。
常に眉間にしわを寄せていて、
目は猫のようにつり上がっていた。

それでも目が大きくて、
いつも完璧な化粧をしていた。

少し厚めの唇はいつもきらきらしていた。


でも今は荒れていて、
くすんだ色をしている。


「あっこ先輩ですか?」


そう疑ってしまいたくなるくらい別人だった。




< 300 / 403 >

この作品をシェア

pagetop