*花は彼に恋をする*【完】

***

あの後、翔英さんと私は

ホテル内をぐるりと見て回ったり

敷地内の庭でお喋りしながら

指を絡ませ合って散歩した。

こんな風に並んで歩けるなんて

夢にも思わなかった。

絡まり合った指をキュッと握りながら

「…気になってた事があるんです。」

私がそう口を開くと

「…ああ、いいよ。何?」

と彼は立ち止まってくれた。

「…私が、翔英さんを好きだって
いつ…気づいたんですか?」

質問しておいて

恥ずかしくなって俯く私に

「…初めて夕飯に誘ってくれた日かな。
俺を見る瞳が
会社と全く違っていたからな。」

と、言いながら

青く澄んだ空をチラリと見た後

再び私に視線を向けた。


「…一応、俺は玲花の元上司だけど
普通の男だ。
キミを襲わないとも限らないのに
俺を信用しきって家にあげて
お袋の味のような家庭的な料理を
食べさせてくれて
ご飯を食べる俺の顔を見て
嬉しそうな顔をしたかと思えば
帰る時は寂しそうに
泣きそうな顔をする…。」

「……。」

「…その時気づいた。
玲花は俺が好きなんだなって…。
だけど今度こそは
絶対に失敗したくないから
この歳なのに色々悩んだよ。
『まるで10代の若者みたいだね。』
って、瑛美香に突っ込まれたけどな。」

そう言って彼は苦笑いしながら

また一瞬空を見上げた。

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