雪恋ふ花 -Snow Drop-

春人が用意してくれた下着とルームウェアに着替えると、珠はリビングに戻った。
春人の姿が見えず、キョロキョロ見渡すと、ベランダからちょうど入ってくるところだった。

「ベランダ、見てもいい?」

「どうぞ」

ベランダに首を出して、珠は「あっ」と声をあげた。

「これ、全部、春さんが育ててるの」

「うん。学生時代、園芸部だったんだ」


そんなに広くはないベランダにはプランターやら鉢植えがずらっと並んでいた。

「ほら、髪ぬれたままだと風邪ひくよ。ドライヤー出すね」

このマメさはどこから来るんだろう。
珠は気になっていたことを聞いてみることにした。


「あの、春さんはいつも泡風呂なの?」

すると、春人がおかしそうに笑い出す。

「さすがに、それはないよ。嫌いではないけどね。ちょっと贅沢なバスタイムで元気になれることって、あるでしょ?」

そう言われて、珠はハッとする。
自分のために、春人が用意してくれたのだ。

「春さんはクレンジングも、持ってるの?」

「ええっ? なんのこと?」

クレンジングの意味がわからなかった春人が聞き返す。


「私のお化粧、おとしてくれたでしょ?」

「ああ。ネットで調べたら、オリーブオイルで代用できるって書いてたから、やってみたんだ。もしかして、肌、べたついたりしてる?」

「ううん、全然。いつもと変わらないよ。オイルの化粧落としもあるし」

「良かった。化粧おとさずに寝たら肌に悪いって話、よく聞くから、一瞬迷ったんだけど。化粧水は男性用しかなかったから、心配だったんだ」


珠は春人の思いもよらない会話にただ驚くばかりだった。
一人暮らしの男性の家にオリーブオイルがあることも驚きだし、化粧水まで常備しているって、いったい何者?

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