雪恋ふ花 -Snow Drop-
ドライヤーで髪を乾かして、再びリビングに戻ると、春人はソファーで本を読んでいた。
「その格好だと、出かけられないよね? 身の回りの物、取りに帰る?」
春人にそう聞かれて、とたんに珠の顔がこわばる。
まだあの家に一人で帰る自信がない。
「良かったら、一緒に行こうか? 車ならジャージでも大丈夫だし」
「ありがと」
珠の家は車で10分ほどの距離だった。
春人につきそわれて、自分の部屋に入る。
泣きそうになる気持ちを深呼吸でごまかす。
「引っ越しするの?」
廊下に積み上げられた段ボールを見て、春人が尋ねた。
「うん。4月から実家に帰るの」
「へえ」