雪恋ふ花 -Snow Drop-
珠が大きめのボストンバッグに着替えやら小物を荷造りするのを待って、再び春人の家に戻ってきた。
ラベンダーのハーブティを飲みながら、春人が言った。
「来週の連休に、また蔵旅館行くんだけど、珠ちゃんも行く?」
「えっと……」
「今シーズン中に、パラレル滑れるようになりたいでしょ? 車で行くから、また眠気覚ましに横でしゃべってくれたらうれしいんだけど……」
珠は一瞬、返事を迷っていた。
行きたい気持ちはやまやまだけど、もうパラレルの練習は必要ない、それを春人に告げるには昨日のことを話さないといけない。
「卒業間近で忙しいかな?」
「ううん、そんなことない。スキー行きたい」
珠は反射的に答えていた。
「そう? 良かった、パラレル教えるって約束した手前、責任感じてたんだ。3日あるから今度こそ、滑れるようになるよ」
春人の言葉に珠の心が急速に冷めていくのを感じていた。
春人にとって、今回のスキーは義務なんだ。
あくまでパラレルを滑らせるための。
面倒見のいい春人ならではの気遣いで。