雪恋ふ花 -Snow Drop-
それから春人の部屋で5晩過ごしたが、二人の間には何も起こらなかった。
春人はあくまで紳士的に珠に接していたし、珠も今のままの関係が心地良かった。
木曜日の夜、春人の車で出発した。
いつもは静かな車内が楽しい会話で満たされていることに春人は幸せを感じていた。
珠にとっても気分転換にはもってこいの旅だった。
途中で仮眠を取って、蔵旅館に到着した。
春人と同じ部屋に泊まることに、珠は何の抵抗も感じていなかった。
5晩も一緒にいても、一度もそういう雰囲気になったことはなかったから。
大広間に荷物を置いて、用意してもらっていた朝食を食べる。
朝食後、ウェアに着替えると、さっそくスキー場へ向かう。
スキーブーツで凍った雪道を歩くことにもだいぶ慣れたが、春人はちゃんと珠のペースを見ながら、ゆっくりと歩いてくれていた。
途中でレンタルスキー店に寄って、板を借りる。
スキー場に着くと、珠はとても懐かしい気がした。
準備運動を済ませ、スキーを履く。
相変わらず、スキー場で見る春人は別人のようにかっこう良かった。
初めは足慣らしということで、南ゲレンデの初級コースで滑ることにした。
リフトを降りると、目の前には絶景が広がっていた。
雪は1月よりは少しやわらかかったが、今年は積雪が多く、3月とは言えまだまだ雪質は良かった。
今シーズンは5回目のスキーなので、珠の体がしっかり滑りを覚えていた。
春人はゆっくりと途中で止まりながら、滑ってくれた。
それからリフト乗り継いで、二人は中央ゲレンデへ向かった。