雪恋ふ花 -Snow Drop-
運ばれてきたおぜんざいには、小さな焼き餅が二つ入っていた。
一口すすって、珠は目を輝かせた。
「ほんとに、おいしい!」
「だろ」
春人はうれしそうに笑った。
「グラニュー糖じゃない」
そう言って、珠が微笑んだ。
「ん?」
「グラニュー糖の頭にキーンってくる甘さって、苦手なんですよね」
「わかる、それ」
「だから、外ではおぜんざい食べないようにしているんだけど、ここのはほんとにおいしい」
「ああ」
「私ね、おふくろの味がおぜんざいだって言ったら、他にもいろいろ料理作ってるのにって、母に怒られちゃって」
「ははは、そらそうだ」
「でも、母のおぜんざいは、三温糖で作るから、甘さが控えめで、小豆がいっぱい入ってて、さらさらじゃなくて、ほんとにおいしんですよ。冬になったら必ず食べたくなるの。和三盆のおしるこみたいに気取ってなくて」
「こんなところに、ぜんざいフリークがいるとはな。俺もここに来たら1度はこの店に寄ることにしてるんだ」
春人はどちらかと言えば人見知りで、友達も少ない。
こんなふうに初対面の人間としゃべるのは特に苦手だった。
けれども、そんなことを忘れさせるほど、珠との会話を楽しんでいた。