雪恋ふ花 -Snow Drop-
「おまえ、何やってんの?」
不機嫌な若い男の声が背中から聞こえてきて、春人が慌てて振り向いた。
「あ、賢ちゃん、おかえり」
珠がぎこちなく笑った。
「おまえ、どこ行ってたの? いつまで待っても来ねえし」
不機嫌さを最大限にこめた声で賢が言った。
「ごめんね。途中で転んだりしてたら、下に降りるの遅くなっちゃって……」
春人はそれを聞いて、ハッとした。
雪に埋もれて、一人で助けを待っていたことを言わないんだな。
「で、そいつ、誰?」
賢がぎろりと春人をにらむ。
「えっ? ああ、ええと、スキー場で助けてもらった春人さん」
「あっそう。こっち来いよ、タマ」
乱暴に腕を引っ張られて、珠は賢の後ろに隠される。
「言っときますけど、こいつは俺の女なんで」
賢がキッと春人をにらんだ。
「賢ちゃん……」
「……」
その傍若無人な態度に、一人残された春人はあっけにとられて、言葉も出なかった。