雪恋ふ花 -Snow Drop-
部屋に帰ると、姫花がかけよってきた。
姫花とは高校の同級生で、大学は違うが時々一緒に遊びに行く。
今回も姫花と彼氏の昌典(まさのり)がスキーに行くと言うので、誘われてついてきたのだった。
「ごめんね。珠が一人だなんて知らなくて。賢と一緒だとばっかり」
「姫花が悪いんじゃないよ」
「ほんと、賢ったら、何考えてんだろ。自分の彼女を一人でほったらかしにするなんて」
「もういいよ。無事に帰って来れたんだし」
「いいんじゃねえ? こいつも男と楽しんでたみたいだし」
部屋の隅に座っていた賢が突然、冷たく言い放った。
「ちょっと、何よそれ? そもそも、珠を一人にしたのは、あんたでしょ?」
「だってこいつ、転んでばっかなんだぜ。かっこ悪くて、一緒になんか滑れるかよ」
「だからって、初めて来たスキー場に置いてくなんて」
まだ何か言いそうな姫花の言葉をさえぎるように珠が言った。
「ごめんね。私、スキーが下手で……」
賢といると、いつも思ったことが言えない。
賢とつき合い始めたのは、姫花の紹介がきっかけだった。
昌典と賢が知り合いで、ダブルデートをすることになり、そのまま気がついたらつきあうことになっていたのだ。