雪恋ふ花 -Snow Drop-

夕食の時間になっても、賢の機嫌はなおらなかった。
みんなで楽しく食べている席で、一人ぶすっとふてくされていた。


「何、見てんだよ?」

突然、賢が立ち上がって、窓際の席に歩いていく。
食堂にいた数組の泊り客が何事かと見ている。


「べつに」

春人が悪びれることなく言った。


「おまえ、ムカつく。タマは俺の女だからな」

「だったら、もうちょっと、大事にしてやれば?」

春人が小さな声でつぶやいた。


「なんだと?」

「賢ちゃん、もう飲み過ぎだよ~。部屋に帰って、休もう」

珠がペコリと頭を下げると、賢の腕を引っ張って、食堂を出ていく。
あまりに恥ずかしくて、春人の顔を見られなかった。

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