雪恋ふ花 -Snow Drop-

「おまえ、何やってんの?」

不機嫌な若い男の声が背中から聞こえてきて、春人が慌てて振り向いた。


「あ、賢ちゃん、おかえり」

珠がぎこちなく笑った。


「おまえ、どこ行ってたの? いつまで待っても来ねえし」

不機嫌さを最大限にこめた声で賢が言った。


「ごめんね。途中で転んだりしてたら、下に降りるの遅くなっちゃって……」

春人はそれを聞いて、はっとした。
コースアウトして、雪に埋もれて動けなかったことを言わないんだな。


「で、そいつ、だれ?」

賢がぎろりと春人をにらむ。


「えっ? ああ、ええと、スキー場で助けてもらった春人さん」

「あっそう。こっち来いよ、タマ」

乱暴に腕を引っ張られて、珠はよろけた。
賢は自分の後ろに珠を隠すように立って春人をにらみつける。


「言っときますけど、こいつは俺の女なんで」

賢がきっと敵意むき出しの目で春人を見た。


「賢ちゃん……」

「……」


その傍若無人な態度に、一人残された春人はあっけにとられて、言葉も出なかった。

< 33 / 181 >

この作品をシェア

pagetop