雪恋ふ花 -Snow Drop-
午後のレッスンにも、珠はさっぱり身が入らなかった。
どうやって、賢の機嫌をなおせばいいかとそのことばかり考えていた。
それでもプロの指導によって、ほとんど転ばないようになっていた。
もう暴走することもないし、思った角度に曲がって、止まれる。
ここまでくれば、人様に迷惑をかけずにすむレベルだ。
レッスン終了時間に宿のあるゲレンデへ送り届けてもらうよう、インストラクターに頼んであった。
昨日は春人のガイドで帰った林道をインストラクターと滑って戻る。
途中のレンタル店で板を返して、宿に戻り、急いでお風呂に入って、荷物を整理していると、3人が戻ってきた。
賢の目を見て、まだ機嫌がなおっていないことを珠は悟った。
「珠、おまえ一人で帰れ」
「え、それどういうこと?」
「実は車に乗せる子、見つけたんだ」
「え……?」
「そういうことだから。おまえ、あの親切な野郎にでも送ってもらえば?」
珠は顔から血の気が引いていくのを感じていた。
どうやって帰ればいい?
慌ててフロントへ飛んでいくと、宿の人に最寄り駅までの交通手段を確認する。
幸いにも最寄りの長野駅までバスが出ているらしい。
その時刻表も教えてもらって、慌てて荷物をまとめて、バス停に向かう。
姫花と昌典が間に入ろうとしてくれたが、車の定員は4人。
そして賢が乗せると約束した女の子は、もう宿まで来ているのだ。
たとえ珠が乗れたとしても、今度はその子が帰れなくなってしまう。