雪恋ふ花 -Snow Drop-
「鳴ってる」
「え?」
「携帯」
「ああ」
珠は慌てて鞄から携帯電話を取り出すと、表示を確認する。
姫花だった。
「もしもし」
「あ、珠? 今、どこ?」
「えっと……」
そう言いながら時計を確認すると、珠は咄嗟に計算して答えた。
「駅で電車待ってるとこ」
「電車あるの?」
「うん、だいじょうぶ。そっちは?」
「サービスエリアで休憩してるとこ。じゃあ、気をつけて。何かあったらすぐ、電話するんだよ」
「うん、ありがと」
なぜ、電車で帰ると嘘をつく必要がある?
答えは一つだ。
側に賢がいるんだな。
珠が携帯を鞄にしまうのを待って、春人が低い声で聞いた。
「おまえ、俺に嘘ついてるな」
「え?」
「サービスエリアって、聞こえた。友達はまだ宿に残ってるんじゃないんだな?」
「あの……」
「また、置いてかれたんだな? そうなんだろ」
春人の激しい口調に、珠は言葉をなくす。
「ごめんなさい。嘘ついてて」
「俺が怒ってるのはそこじゃない。どこまでお人よしやってるんだって、言ってるの」
「これには事情があって……なんかね、帰りの足がなくなっちゃった女の子がいて、その子乗せるからって……車は四人しか乗れないから……だから……」
「嘘つくの、下手だな」
「え?」
「ばれてるよ。どこまで、あいつをかばう気?」
「元はと言えば私が悪いの、だから……」
「スキーのレベルが初級者だからか? パラレル滑れないからか?」
「来る前にちゃんと言ったんだけど、素人だって。でも、車の人数があるからって、連れて来られて……」
「それで、帰りは自分で帰れって? おたくの彼氏、どうなってるの?」