雪恋ふ花 -Snow Drop-
しばらくして、何人かの客が入ってきた。
隣に人が座ったので、ふと顔を上げると、春人だった。
「あ」
「春さん」
「もしかして、また一人?」
春人の表情が曇る。
「あ、違うんです。今日は一人でスクールに入ってるの。早くちゃんと滑れるようになりたくて」
「ふーん」
「パラレルが滑れるようになったら、一緒に滑ってくれるって、賢ちゃんが言うから……」
「へえ」
暗い空気を押しやるように、珠が明るい声で言った。
「春さんは、いっぱい滑れました?」
「ああ。天気もいいし、気持ちよく滑れたよ」
先に運ばれてきたピザを珠が差し出す。
「1つ食べません?」
「いや、いいよ」
「ここのピザ、すごくおいしいって、インストラクターに教えてもらって。私、きっと全部食べ切れないから、どうぞ」
人なつっこい珠に、春人はいつもの自分のペースが崩れていく気がしていた。
昨日から変だ。
こんなふうに、初対面の女性と親しげに会話するのは苦手だったのに……。