雪恋ふ花 -Snow Drop-
急に黙り込んだ助手席の珠を見て、春人は思わず息をのんだ。
うつむいた珠の目からポタポタと涙が、落ちていた。
「悪い。ちょっと言い過ぎた。泣くなよ」
「……賢ちゃんが一度怒ったら、なかなか機嫌なおらないって、ちゃんと知ってたのに……」
「俺のせいなんだな」
「え?」
珠が驚いて、春人を見る。
「俺がおまえに親切にしたのが気に入らなかったんだな」
「それは、ちがう……」
必死になって言う珠に、春人は心があたたかくなった。
こいつは、人のせいにしないんだ。
相手が誰であっても。
「悪かった。こんなことになるとは思ってなかったから、ついでしゃばった」
「そんなこと言わないで。春さんは何も悪くないよ……春さんにはほんとに感謝してるの……」
涙をいっぱいためた目で、そう言われて、春人は胸が変なふうに痛んで、目をそらした。
「夕飯、食った?」
「まだ」
「よし、こういう時はうまいもん食って、元気だすぞ」
珠がやっと笑ったのを見て、春人も微笑み返す。
「ほら」
赤信号で止まった時に、ポケットからハンカチを出して、珠に渡す。