雪恋ふ花 -Snow Drop-

やっぱり、今日もパラレルはマスターできなかった。
珠がしょんぼりしていると、春人が心配そうな目でのぞきこむ。

「疲れたか?」

「ちがうの」

「じゃあ、何か心配事?」

「いつになったら、滑れるようになるのかな、パラレル」


最後は消え入りそうな小さな声になった。
春人が驚いた顔をする。

「そんなに焦ることない。あぁ、いや、滑れるようになって今シーズン中にまた彼氏とスキーに行きたい気持ちはわかるけど……」

「……」


ちがう、そんなんじゃない。
珠は思わず叫びそうになった。
でも、秘めた思いを春人に気づかれるわけにはいかなかった。


「ある日突然、できるようになるから。もう少し、がんばってみよう」

春人にそんなふうに励まされて、珠はますますうつむくしかなかった。

< 83 / 146 >

この作品をシェア

pagetop