雪恋ふ花 -Snow Drop-

春人が連れて行ったのは、近くのカフェ・バーだった。
町家を改造して作った店内は、照明をおとして、ムーディな雰囲気をかもしだしていた。
横並びのソファー席を選び、カフェオレを注文する。


「晩飯は?」

「まだ」

「もう、10時だぞ」

「お腹、すいてなくて……」


まだ青い顔をしている珠に、自分のコートもかけると、そのまま左手で肩を抱き寄せた。
ついたてと観葉植物で目隠しになっていて、店内の他の客からは死角になる。
珠が慌てて、身を離そうとしたが、手に力をこめるとおとなしく観念した。

「体冷え切ってるだろ。あっためないと」

珠は黙ってうつむいていた。


「あいつと約束してたのか?」

珠がこくりとうなずいた。

「それで、またすっぽかしか?」

「……」

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