雪恋ふ花 -Snow Drop-

花火の規模は小さかったが、それでも予想外に見られたことで珠は興奮していた。

聞きたいのに聞けない。
もしも違っていた時がこわいから。
それより、何を勘違いしているんだと思われることが、もっとこわいから……。


スキー場内の喫茶店で軽く食事を取った後、外に出てみると、満点の星空が広がっていた。

「うわぁ、きれい」

「標高800メートル以上はあるからな」


夜になってどんどん気温が下がっているらしく、珠が思わず身震いした。

「寒い?」

「んーん、だいじょうぶ」

「心があたたかいから寒く感じない」
そんなことを口走りそうになって、珠は慌てて口を閉じた。


「はい、冬の星座の復習。冬の大三角は?」

「えっと、シリウスでしょ、それからベテルギウス…ええと……」

1つずつ星を指していた珠が上を向き過ぎて、ひっくり返りそうになる。


「うわっ」

そう叫んだ瞬間、珠は大きな腕に抱きとめられていた。


「危ないだろ」

そう言って春人が立たせようとするが、スキーブーツのかかとを雪の上につこうとしたので、よけいに滑る。
何度か、雪をけって立ち上がろうとしていると、春人がぎゅっと胸に抱き寄せてくれた。


「あ、ありがと」

「珠……」

名前を呼ばれて、珠が見上げると、すぐ側に春人の顔が迫っていて、唇に春人の唇が一瞬触れると、すぐに離れていった。


「あの……」


「もう少し、滑って帰ろうか」

春人は何事もなかったかのように、ゲレンデへ歩いていく。

今のは何?
どういう意味?

珠の心が激しく高鳴る。


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