士農工商犬猫ドンバ

検品

そして、ナオンのマンションの一室で“検品”が始まった。

「5人来よったね。 きょうは時間ないけん、早うな」

「あ・・姐さんすんまへん。 実はきょう一人あれやし」

「・・そうか。まあ急やしの。 きょうのんは七三てパパ言う
とったし。 しゃあないな、ええよ」

「すんまへん姐さん」

「早う支度しんさい」

「はい。 ほんなら、あんたら早よしんさい!」


・・・何やってんだあいつら。

・・・わかんねえよ、声だけじゃよ。

オヤジ居ねえし、開けるか。

・・・でも・・バイヤだろ・・・。

うん・・バイヤだな・・でも見てえな。

ああ、見てえよ。


(うーっ あっ!う~ん)(うっ! う~ん・・ふ~・・)


 ピシッ!


「なんな!あんたぁ!おちょくっとんのか!なめたらあかんよ、
見てみいこの娘、墨入っとるやないかぁ」

「えっ! あっ、ほんまや。こまいの気付かんかった。
姐さん、勘弁してつかあさい。 この娘訳ありやし・・・」

「あんたな、ここ来んのんはみな訳ありなんよ。なめたらあかん」


...ぐええ、やるな、迫力だ。

何やってんだ。・・・もうガマンできねえ・・ちょい開けるか。

おぉ、ヘマすんなよ。ちょっとだけな・・

・・・よし、まだもうちょい。

おっ! 

どうよ見えんのか? 

ちょっとな、足が見える。

ん? 足? 俺にも見せろよ。

お前上、俺下で。 寄りかかんな。

もう・・・ちょと開けろ・・

おっ?! おーっなんだこりゃ。

なにやってんだこいつ等!

・・シーッ・・声でけえよ。


「この娘外してな、明日から4人でやりんしゃい。ええな」

「姐さんすんまへん、ほんますんまへん。おおきに。
あんたらも頭下げ。」

・・・

「ほしたら去ぬよぉ。支度しんさい」

 
・・・終わったか。

「さぁ、あんたら出ておいでぇ、もうええよぉ」

ええ?! もういいって、まだあいつ等帰ってねえだろよ。

いいじゃねえか。○コがいいって言ってんだからよ。

出ようぜ、見ようぜ。


  ガラツ バタン!


あっ! おおー!! ああ

...こんちわっ ははは・・・

 
「あーっなんなー?! こんちわて。姐さん、なんなあ!」

「なんなって、見た通り男や。ホッホ 
あんた、きょうは一人ペケついとんのわかっとんな。 
パパにはわしがうまいこと話しちゃる、心配すな。」

「しゃあけの、きょうはわしの貸しやど。 
あんた等も、こん事黙っとったらチャラや。わかるな」

「へえ、姐さん」
 
「いらん事喋ったら、あんた等の仕事も指ものうなる。ええな」

「はい姐さん。 わし等なんも見とらんけん」
 
「そやな・・ほんなら去ねや。 バイバイ」

「はい。 あんたら早よ服着い、靴履き。ほいじゃさいなら」
 

        <バタン!>

よう、何やってたんだよ、お前等よぉ。
 
「ほっほっほ あんたら知らんでええのや。なぁタカ○」

「そや、知らんでええ。 ええの見よったし、よかったやん」
  
○コ おまえさあ・・・

「ええ言うとるんよ。ホホホ。きょうはあんたら休みでしょ。
出かけんね。 レコードでも何でも買うちゃるよ」

おう、腹へった。ルービ飲みてえ。LPも買ってくれ。へへ

俺、ジーパン買って。ブラックジーンズ二本よろしく。へへ
 

しかしいいナオンだったな。若いしな。

なあ、○コさ、いっこだけ教えてよ。
女が居るのに、なんで俺等を押入れから出したのよ。
パパにばれたら、やばいじゃすまねえだろ。

「ふっふ、なら言うちゃろか」

「あんたらが押入れにおるのな、バレとったんよ。
検品の娘等は分かっとっても何も言えんでしょ。
じゃが、あの女にはバレとったんよ。しっかりな」

ほんとかよ?

「ほんまや。こばちゃん、ゴソゴソ声も出しよったろぉ」 

・・おぉ まあな・・っへっへ

「それ隠しとったらな、あんことないこと喋りよるやろ。
だから、わしからバラしたんよ。 まあ取引やね。 
取引しとったら、あの女何もしゃべれんわ」

ほ~ええ・・・お前等・・悪党だな・・やるなぁ。


「ほなヨッチャーん。 舶来ビールとオムラ~イスけ?」

うっほっほ、は~い姐さん! ついでにLPもね~百枚ほど
どーんと買ってちょーだいなー。

「ふっ 外出たら姐さんはいけんよぉ」 

は~い、ね~さん。 わーかりやしたあ~。

「さぁ 早よしんさいしんさい っほっほ」

よっしゃ、じゃ行くか。しかしすげえ日だなきょうは。
 

<こうして休みは終わり、翌日3時入りで練習開始。 
まだしっくりこないガダダビダを仕上げる。
プーチが多い金づる曲だ。タイバンと差をつけなきゃ>

おっ、ミミ早えじゃん。 ナオンとこ泊ったんじゃねえの?

「行ったよ。きょうは仕事だから、おん出されてパチンコよ」
 
おお、そりゃかわいそうに。俺等はイズミと、最高よ。なっ

「おぉ、すごかったぜ」

「ふん、どうせパツイチやって買い物させてだろ」

まぁな、でもちょい違うのよ。 いい物見ちゃったのよ。

ありゃ、あさすがのミミも経験ねえだろうな。 ひっひっ。

「うるせえな。ナオンの話はカンケーねえ。練習やるぞ」

そうか、パチも負けたみてえだし。ご機嫌よくねえな。

「うるせえよ。 早くやばいとこさらって、仕上げようぜ」


ユキオ、レスリーのリフ、もうちょいまともにやれよ。
ニューオリンズに負けてんぞ。

あいつらキーボードいねえのに、俺らよりサマんなってんぞ。

「そう。ミミの言う通り。きょうは完ぺきに仕上げんぞユキオ」

「は~い。そんでこばちゃん何か面白えことあったんでしょ?」

まあな、あとで教えてやる。それより、きょうは気合入れろよ。

「はいっ!」


「ボーカルのあの変な声のイキフン、いまいち出ねえな」

「だろ! 俺も思ってそんで発明したのよ。 ひっひ」
 
「変な声のやりかた、こうよこう。

「いい? in a gadadavida, baby! なっ!どうよ」
 
「おおお! いいじゃんいいじゃん、ゴキゲンじゃん」

「へっへ、でもターギが弾けねえ。両手でマイク持って塞が
なきゃなんねえ」

「いいじゃん。ターウの時ターギなくても、どうせリフはねえし
ニューオリンズと同じじゃ、プーチも同じってことよ」
 
そうよ、差つけていこうぜ なっ

じゃ、その声でユキオも気合いれて、通して一回演ろうぜ。
のべたんでサビ、間奏アドリブ短めでリピートなしでケツ。


In A Gadda Da Vida honey don't you know that I~~

「おお、ターウバッチシ。イキフンOK いいねいいね」

「ユキオ、お前ケツのソロんとこさ、結構ごまかしてんな。
あれバイヤだぞ。 もうちょっとなんとかしねえと目立つな」

「ええ、分かってるんすけど・・・なんか、バイエルの練習
フレーズみてえで片手じゃあ・・」

「ば~かやろう。 てめえの好き嫌いで弾いてんじゃねえぞ。
じゃあ両手で演りゃいいだろ。 やってみろよ」

「ほらほらぁ、それでいいんだよ、そのがよっぽどイキフンだ。
てめえのつまんねえテクより、ドンバの音考えろ」

「はい。 でも両手じゃかっこ悪いす・・」

「うるせえ! お前の手元なんか誰も見ちゃいねえよ。 
出てくる音がしょぼきゃ終わりなんだよ」

「それで演れったら演れよ。カッコつけてんじゃねえボーヤが」

「はい、わかりました。すんません」


あとさ、ハットが4分で裏でバスドラじゃん。
3拍目でちょい走んだよな。 ミミ分かってた?

そんでさ、きのう良ちゃんの見たら、ハットの手すげえ高く
上げて演ってんだ。 あれでキープしてんだな。
俺もあれ真似してんだけど、ペダルのせいかもな。
スピードキングに取り替えてみっかな。
 
コタツで練習の時は走んねえのにな。
でも、ステージでのれなきゃしょーがねえしな。

ヨッこばちゃん、そういうこった。

ユキオ、てめえも見習え。
自分のヤバイとこは自分でさらわねえと、誰も教えてくれねえぞ。
ダメな奴はダメなもん同志で組むんだ。

ザキにも居るよ。くだらねえボーヤバンドがよ。
あいつらはクラブ活動だ。 俺等はプロだろ。 
ガキのグループサウンズじゃあねえぞ。

そうだな。 そんで俺のタイコのソロ入れんだろ?
ついでにイズミもユキオもさ、ソロ入れてみる?

「おお、奴等曲長えのはカンケーねえしな。
ルービと草でラリってっから、長えほうがいいかも知んねえ」

「ええ?ユキオのソロ?笑わせんなよ。 無理、全然ムリよ。
百年早えよ うっひっひっひ」

「じゃあ、スーベのソロいれるか?」

おお、ミミ頼むよ。ベーション行けるし。 っひっひ

俺はどうすんだよ 誰のソロだって休めねえじゃん。

「そりゃタイコの宿命ってやつよ。 ひっひ」

「こばちゃん、じゃあ俺がノーリズムでリブっちゃうか」

おっさすがミミ、たのむよ。 汗ふきタイムだけでいい。

「OK。 でも毎回はムリよ、のったら合図出すわ」

よし、じゃあステージの長さでソロ入れてもう一回演るぞ。

 
「ユキオ、きょうはシーメおごってやっから、気合入れろよ」

「へ~いサンキューです。 がんばりまーす」

「よーし いくぞ!」

    
     <密度の濃い広島じゃけんのお・・・>
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