風の放浪者
「ユーリッドさんも、食べるのですか?」
「あれ? いけない」
「竜って、食物を食すのですか」
何とも面白い発言に、ユーリッドは声を上げて笑ってしまう。
おかしな質問をしてしまったことに気付いていないエリザは首を傾げ、自分が質問した内容をゆっくりと考えはじめる。
「人間の場合は、食べるよ」
「戻るのですか?」
「この姿で、街には行けない」
真剣な面持ちのエリザにスッカリ忘れていたが、彼女は究極の天然。
どうやら安心したことにより、素に戻ってしまったようだ。
真面目なエリザもいいが、天然の方が対応し易い。
そう感じたユーリッドは地面に腰を下ろすと、フリムカーシが帰ってくるのを待つことにした。
「あ、あの……質問していいですか?」
「いいよ。で、どのようなことかな」
修道女として質問をするべきか、それともエリザ個人として質問するべきか。
一瞬迷いが生じるが、やはり好奇心を満たす方を選択する。
エリザは頷き質問の内容を決めると、言葉を発した。
竜は、本当に三匹なのか。
今となっては、これも疑問の対象になる。
以前は司教の話が全て正しいと思っていたが、それも偽りの話。
その為、ユーリッドの口から真実が聞きたかった。
本当の竜という存在を――
「竜は、三匹だよ」
「では、教えは正しいのですか」
「そうだね。一部は、正しいよ。でも、全てではない。この点に関しては、いまだに議論が続いているらしいけど」
ユーリッドの視線が天に向く。
其処には、眩しいほどに光り輝く太陽が存在していた。
エリザもそれに続くように視線を向けるが、あまりの眩しさに目を細め、片手で視界を覆った。
「太陽と月、その二つは僕と同じ。そう、姉と兄……といっても、知っている者は一部の精霊のみ」
「ご兄弟でしたか」
「姉と兄……二人との血の繋がりはない。同じ主人から誕生した、形だけの兄弟と言った方が正しい。姉は夜の世界を選び、兄は昼の世界を選んだ。結局、それが良かったのかはわからない。まあ、平和が保たれているのだからいいのだろう。そして残った僕が、地上を支配する」