風の放浪者
しかし、鈍感な彼は周囲が自分にどのような印象を抱いているのか全く気付いていない。
これも彼の特徴といえば特徴だが、エリザは脱力感に近い感情を抱くとエリックを客間に案内する。
◇◆◇◆◇◆
「気分はどうかな?」
エリックは椅子に腰を掛けると、そう言葉を投げ掛けてくる。
その応え難い内容に、エリザは言葉を詰まらす。
気分がいいとは言い難く、何故なら背負ったものが重すぎるからだ。
「私が、選んだ道です」
「うん。変わったね」
「変わらないと、いけませんから」
「応援するよ」
あれから、二年の月日が経過していた。
二年――それは彼女にとって、短いようで長い時間。
その間エリザは、懸命に神話の真実を伝えていった。
中には嘘つき扱いし信用しようとしない者も多かったが、雪に埋まったベルクレリアが精霊の怒りの強さを証明してくれた。
精霊の裁きが下った街。
温泉で有名だった街は、一日にして人間の負の象徴となってしまう。
同時に人間が信じていたものが違っていたということを知らしめることができたのは、せめてもの救い。
そのように思わなければ失った者達に申し訳なく、また彼等にも悪い。
「それにしても、驚いたよな。ユー君が、創造主だったとは。いやー、只者ではないと思っていたけど」
後にエリザから聞かされた事実にエリックは目を丸くし、言葉を失ったという。
何事にも動じないタフな性格の持ち主だと思われたが、意外にそのような点はシッカリとしていたようだ。
学者と名乗っているだけあって、そのあたりの知識は豊富。
それでも創造主の姿形というのは知識に持っていなかったらしく、ユーリッドという人物を普通の人間だと思っていたらしい。
それは仕方ないといえば仕方ないことで、リゼルに関しての資料は無いに等しく謎も多い。
「よ、よく生きていた」
額から、粘り気の強い汗が流れ落ちる。
知らなかったとはいえ、ユーリッドに対し馴れ馴れしい態度を取り続けていた。
一歩間違えれば、殺されていただろう。
いや、エリックは殺される手前までいった。
現にフリムカーシと二人っきりになった時、彼女は殺気を放っていた。