風の放浪者

「おかしいですか?」

「おかしくはないよ。普通の感覚だね」

「そう言って頂けると、安心します。では、夜に」

「夜でいいんだ」

「幽霊は、夜と相場は決まっています。本当は怖いのですが……仕方ありません。が、頑張ります」

 目の前に幽霊が出現したら、エリザは気絶してしまう可能性が高い。

 その対応として精霊に付いてきてもらおうと考えるが、側にいたレスタは断りのオーラを放つ。

 どうやら、こういうことは苦手のようだ。

(苦手か)

 言葉に出して問い質すことはできないので、心の中でレスタに伝える。

 相手また言葉に出さずに、回答を伝えてきた。

 頭の中に直接響く「嫌だ」という感情が含まれた声音。どうやらユーリッド以外を助ける理由がないと考えているらしく、それにエリザに嫌悪感を抱いている。

「このことは、皆様に内緒にして下さい」

「わかっている。でも、僕でいいんだ」

「他の方々も同じことをしているようですが、誰一人として成功していません。それに、色々とご存知のようですから。ご迷惑だと思います。ですが、ユーリッドさんお願いします」

 聖職者というものは、どのような存在なのか。

 ふと、ユーリッドはそのようなことを考えだす。エリザのような人物が聖職者という枠に当て嵌まるのではないかと思われるが、実際のところはわからない。

 それなら、この件で彼女の実力を測ればいい。

 勿論、手出しはしない。

「気張ると、いい結果はでないけどね」

 その時、低音の声音がエリザの名前を呼んだ。

 二人は反射的に振り返り相手を確かめると、其処に立っていたのは例の異端審問官と知る。ユーリッドは思わず目を細め、相手を睨む。

 しかし相手はユーリッドの表情を気にしていないのか、異端審問官はエリザに話し掛けた。

「修道女たる者、異性との接触は好ましくないな」

「も、申し訳ありません」

「教えを守ることのできぬ者は罪と思え」

 御託を並べるというべきか、自分勝手な言い分にユーリッドは思わず舌打ちをしてしまう。

 異性同士が付き合うことに関して、どこに罪があるというのか。

 そこに「邪な」という言葉が含まれるのなら別であるが、二人の間にそのようなものは存在していないし、持つ理由もない。

 もしそう見ているとしたら、それこそ異端審問官自身が邪な考えを持っている。
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