風の放浪者
光の発生は、ひとつだけではない。
複数の白い光が、エリザの周囲を飛んでいた。
その不可解な現象にエリザは言葉を失い身体を震わし、自身の身を守るかのように身構えていた。
「……そう、偽りですね」
何気なく呟かれた言葉は、ユーリッドが発したもの。
それに応えるかたちで白い光は彼の周囲を飛び交い、それらの行動は何かを訴えかけているかのようにも見えなくもなかった。
「僕もそうです。ですから……」
その先の言葉は、態と発しないことにした。
それを察したのか、白い光は大きく揺れユーリッドの周囲を回る。
するとその中のひとつがエリザに興味を示したのか、彼女のもとに向かった。
「い、嫌っ!」
「怖がらなくいいよ。今のところは、無害だから」
今のところ――エリザは、ユーリッドが言っている言葉の意味がわからないでいた。
だが、回答を求めている余裕はない。
時間が経過していくにつれ、白い光の数が増えていったからだ。
「助けるのでは?」
「そ、そうですけど……」
「修道女の力、拝見したい」
先程とは違う声音に、エリザは息を呑む。
別人が発しているかのような、その声音。
だが、外見はユーリッドそのもの。
しかし、声音だけを聞いていると別人と勘違いしてしまう。
一体、何――
だが、今はそれを質問している暇はない。
それ以上に、この白い光の正体を知りたかった。
だから意を決し、ユーリッドに自分達の周囲を漂っている白い光がどのようなものか尋ねる。
「もしかして、幽霊ですか?」
「今更、何を」
白い光を怪奇現象の一種と認識していたが、どうやら幽霊だということを判断していなかったらしい。
次の瞬間、エリザの甲高い悲鳴が敷地内にこだましていく。
大胆とも迷惑とも取れる行動に、ユーリッドは渋い表情を作り舌打ちをしていた。
同時に、一斉に光が点る。
エリザの悲鳴によって、辺りが騒がしくなっていく。
いくら彷徨える魂を救う為とはいえ、今は就寝時間。見付かれば、それなりの罰が待っているだろう。
戒律を破った者に対しての罪は想像以上に重く、エリザを含めユーリッドに対してもそれ相応の罰が待っている。