風の放浪者
彼等は、血に飢えている。
寧ろ、彼等の存在こそが異端といっていい。
聖職者の名前を被った悪魔――この状況を目撃している者がいたら、そのように表現しているほど彼等は汚れていた。
◇◆◇◆◇◆
フリムカーシの背中に跨るユーリッドは、真剣な表情を浮かべていた。
そして、疑問に思ったことを質問としてレスタにぶつける。それは「どうして異端審問官の腕を凍らせたのか」というもの。
『欲に汚れた人間に、触れてほしくないからです』
「お前が聖職者を嫌っているというのなら、後ろの人物はどうする? 彼女もその聖職者の一人だ」
指し示した人物というのは、ユーリッドの背中に懸命にしがみ付いているエリザのことだった。
今、恐怖心が勝っているのか瞼を硬く閉じ、微かに身体を震わせている。
それは仕方がないことであり、異端審問官の本来の姿をその目で目撃してしまったのだから。
それに片腕を失った光景も実に悲惨なものであり、彼女にとってトラウマになりうる光景だった。
『後で排除します』
「止めておけ。彼女は、教えに従っているだけだ」
エリザに罪を問うのは間違っていると、ユーリッドは言う。
彼女は上の者の教えを信じているだけあって、彼女を含め多くの者達に信じ込ませてきた人物が悪いと説明する。
そう、それは一部の人間。
そして真実を捻じ曲げた張本人であり、自分の地位を失いたくない者。
「真実がわかれば、何もしない」
『そう仰るのなら。主の言葉に従います』
ユーリッドにそのように言われたら、レスタは何も言えなくなってしまう。
二人の関係は思った以上に複雑で、精霊使いと従える精霊の関係という言葉で表すことができない。
そんな二人のやり取りに耳を澄ませていたフリムカーシは、レスタの沈黙と同時に口を開いた。
『レスタの心遣いです。ご理解ください』
「わかっている。お前達の心は……」
『我等は、聖職者を好きません』
人間――特に、精霊に仕えていると勘違いしている人間がレスタは気に入らなかった。
精霊は人間達に崇められることは望んではおらず、相手が勝手に「こうだ」と、教えという名の決め付けをしているだけ。
いわば彼らにとっての演出であり、信者を増やす道具にすぎない。