風の放浪者

『レスタが言うように、汚れているわ』

 その言葉に、エリザはか細い悲鳴を発した。「精霊が、聖職者を嫌っている」このような内容の話を聞いて、平常心を保っていられない。

 そして今まで信じていた信仰が、崩れ去る瞬間でもあった。

「人間が、精霊を信仰するというのは構わない。ただ、本質を隠すことは絶対に許されない」

『そして、そのことである方が苦しむ』

 エリザの首筋に冷たい何かが触れた。

 それはレスタの指で、ユーリッドがこの場にいなければエリザは確実に殺されていただろう。

 無知は、最大の罪。

 それを嫌でも思い知らされる。

 レスタが何をしようとしているのかユーリッドにはわかっていたが、注意は行わない。

 教えに従っていたとはいえ、エリザは彼等が嫌う聖職者。

 怒りの矛先を向けられても、反論はできない。

『此方で、宜しいでしょうか?』

「ああ、あっている」

 目的の場所――街外れの一角に到着すると、フリムカーシは地面に着地した。

 そして再度ユーリッドに確認を取ると、再び走り出す。

 源泉へ――それが、ユーリッドの下した命令だった。


◇◆◇◆◇◆


 彼等が到着したその場所は、岩と岩の間から湯煙が立ち上る人間が辛い一帯だった。

 周囲に漂う熱気は容赦なくエリザを襲い全身から汗が噴出すが、ユーリッドは涼しい顔をしている。

 其処は温泉の源泉地であり、普段は誰も立ち入らない場所。

 フリムカーシは到着と同時に身を屈めると、二人を下ろす。

 エリザは地面に足を付けると同時に、自身の身に起こった出来事を必死に考え整理していく。

 ユーリッドの側にいるのは、間違いなく精霊と呼ばれる生き物。

 そのことは、瞬時に理解することができた。それにエリザに向けられる、刺々しいまでの言葉の数々。

 何より一番の恐怖は、姿を見せない相手が発している痛々しいまでのオーラだ。

「よく見たら、貧相な子」

 獣の姿から人間の姿へ戻ったフリムカーシはゴツゴツとした岩に腰掛け脚を組むと、エリザに対して正直な感想を述べていく。

 そして、クスっと意味有りげな笑みをこぼすと、更に言葉を続けていく。

 フリムカーシの言葉は辛辣そのもので、完全にエリザを見下していた。

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