風の放浪者
「あの時、私から奪った力を取り戻せばよかったのか。いや、それを行っていたら他の生き物が……」
自らの王を傷付けた人間に対し、精霊は怒り狂い人間に襲い掛かった。
神話に書き記されている内容では千年前の出来事により人口が減少したとなっているが、その背景にはこのような理由が存在する。
歴史上はじめて精霊が人間に牙を剥いたのだが、彼等は闇雲に動いたのではない。
目的は、リゼルを傷つけた者を捜す。
しかし精霊とて、中にはことを反する者も存在する。
それは下級精霊であり、この者達は命令ということを盾にし自分達の思い通りに動き遊んだ。
その結果――
『彼等が、このようなことを行わなければ……何と、愚かなことをしてしまったのでしょう』
「そう、身の程知らずの人間が……」
「私の力は、今でも残っている」
「しかし、人間が御するにはあまりにも大きい力。人間は主ではない。それだというのに……」
吐き出すように、レスタが横から口を挟む。
人間がリゼルの力を手に入れた時、多くの者は肉体という器が耐え切れなかったという。
世界を創造した力――所詮、身に余るものなのだろう。
人間の中には力を自分の物にした者達もおり、その末裔が精霊使いと呼ばれる者達。
それは、複数の混血が続けば時間の経過と共にいずれは失われてしまうが、人々の身体に流れる血はそれを許さない。
たとえこの世から精霊使いが消えたとしても、罪が拭われることはない。
『何故、貴方様を傷付けてしまったのか……人間は、より大きな力を望むのが原因なのでしょう。見栄を張り、他人と自身を見比べてしまう。そして、恐れを知らない。貴方様は世界の創造主であり、我等は生み出された存在。どうか、お許し下さい……我々の罪を――』
「祖父は、お前達と同じ学者だった。そして、このように言われている。仲間を救ってほしいと」
その瞬間、老人の頬に涙が零れ落ちた。
やっとこの地から、開放される。
その思いが溢れ出たのか、清々しい表情を浮かべていた。
痛い……苦しい……魂が発した言葉は、学者達の生き方を表している。
エリザは何も言えず、彼等のやり取りを無言で見詰めていた。
そして心から恥じる。
真実を知らなかったことを――また、自分が信じてきた教えが全て違うということを改めて知る。
それは、人間の罪を覆い隠す為に生まれたもの。
いや、生み出されたと言った方が正しい。