風の放浪者
貴女は、悪くはない。
何故、そこまで優しくできるのか。多くの学者を苦しめた、仲間だというのに。
しかし、最後は許してくれた。
それならいっそ、取り殺してくれた方いいと感じてしまう。
なのに――
「エリザ」
その声にハッと顔を上げると、懇願するように訴える。
学者達の真意が、わからないと――そして、どうしてあそこまで優しくなれるのか、理解できないエリザは大粒の涙を流す。
「彼等は、何も望みはしない」
「ですが、先程は私を襲おうとしました。それだというのに……どうして……どうしてなのですか」
「何度も言うが、君が悪いわけではない。それに気付いたのだから、何もしなかったのだろう」
彼の説明に、エリザの涙が溢れて止まらなかった。
嗚咽を漏らし、これからの自分の在りようを考える。
リゼルと共にいれば……そう回答を導き出したのか、暫く一緒にいたいと告げる。
それに対して、文句を言う者はいない。
珍しくレスタは沈黙を保ち、フリムカーシは肩を竦めるも了承するかのように頷く。
光が消え、周囲が闇に包まれる。
皆、解放され天に向かったのだろう。
同時に、周囲を包んでいた重苦しい雰囲気が消えていた。
それは解放と同時に、学者達の恨みが消えたに違いない。
エリザは涙で濡れる瞳で天を仰ぐと、彼等に向かい誓いの言葉を呟く。
私、皆様の意志を受け継ぎます。
その言葉に、ユーリッドは微笑を浮かべる。
そして、次の狙いを聖職者へと定めた。
真実を正す為に――
◇◆◇◆◇◆
朝から、ベルクレリアの街は騒がしかった。
何が起こったのかと人々は窓を開け、慌しく走る人達に視線を向ける。
人々口々はある噂話をする。
修道女を誘拐した人物がいると――
その慌しさは、郊外には伝わってきていない。
どうやら異端審問官や他の聖職者は街の中を重点的に調べているらしく、それ以外の場所には目をつけていない。
お陰でユーリッド達が郊外にいることは知られておらず、落ち着いてこれから行うべき計画について練ることができた。