小咄
「えへ。うん、やっぱり嬉しいっていうのが正しいかも」

 真砂に抱き付いたまま、嬉しそうに深成が見上げてくる。
 ふ、と真砂は少し口角を上げた。

 可愛いのだが、やはり欲望をそそるような色気はない。
 お子様度合いが半端ないのだ。

「それならやっぱり、あいつに渡すわけにはいかんな」

 真砂だって、深成を嫌いなわけではない。
 ここの誰よりお気に入りだ。

 ただ、それは愛玩動物を愛でるようなもので、一緒に寝たからといって、男女の関係になるというものではないのだ。
 ……今のところは。

 だが六郎は違う。

「とりあえず、お前は俺のものだ」

「え~? 何それ」

 可愛がっているペットを取られるわけにはいかない。
 ぷぅ、と膨れる深成に、真砂は少し顔を近づけた。

「お前が今一番好きなのは、俺なんだろ。俺だってお前を気に入ってる。他の奴に取られる前に、契約しておくのは当たり前だ」

「何さ、契約って。わらわがほんとに真砂を好きか、心配なの?」

「そんなことじゃないが。でも証明は欲しいかな。お前は特に、わからんし」

「わらわが引っ付いて寝るのは、真砂だけなのに?」

「お前と一緒に寝ることなんて、こういうどうしようもない状況でしかないだろ。今日いるのが俺じゃなく捨吉だったら、お前、捨吉と寝ないといかんだろ? それしかないし」

「そうだけどっ! わかってないな~」

 がば、と起き上がると、深成は真砂の横に正座して、ちちち、と指を振った。

「もし今日いるのが真砂じゃなくあんちゃんだったらね、わらわ、ソファで寝た」

 というか、捨吉だったら多分、六郎に自分のベッドを貸すだろう。
 そして自分がソファで寝るに違いない。

「何度も言うけど、わらわがこんなに甘えるのは、真砂だけなんだからっ」

 拗ねたように言い、深成はがばっと身体を倒して、真砂に抱き付いた。
 やれやれ、とため息をつきつつ、真砂は深成を貼りつけたまま、目を閉じた。
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