小咄
「さてっ! じゃあ今日は思いっきり遊ぶわよ!」
「おうっ!」
何だかテンションの高い片桐に連れられ、深成は町に繰り出した。
お洒落なパンケーキ屋さんで朝食を食べ、可愛い雑貨屋さんを回る。
ランチを採った後は、巷で人気のカフェでお茶。
「はぁ~。ここのパフェ、食べてみたかったんだ~」
「人気なんだから、それこそ彼氏と来たりしないの?」
「だってここ、この状態だもん」
深成が、つい、と周りを示して言う。
ここはパフェの種類が豊富な店だけあり、女子に大人気だ。
自ずと店内は女子ばかり。
こういうところでも浮かない片桐はつくづく凄い。
「さすがに真砂は嫌がるもん。それでなくても、こんな女の子ばっかのところに真砂を入れたら、周りの目が大変……」
言いつつ視線を滑らせていた深成の目が、ある一点で止まった。
今しがた言っていたように、周りの目もそこに集まっている。
店の奥に、やたらと浮いた男がいる。
仏頂面だから余計だ。
「ま、真砂……」
奥にいたのは真砂である。
そして、その横には、あのモデル美女。
「ん? ……へ~ぇ。あれが噂の、子兎ちゃんの彼氏? なるほど、確かにいい男ねぇ」
片桐が、呑気に手を翳して真砂を見る。
「真砂……。今日はデートだったんだ。こんなとこ嫌がってたのに、あの人のためなら入るわけ」
無理やりとはいえ、折角楽しく過ごしていたのに、最後に一番嫌な場面に出くわしてしまった。
何で、と俯く深成の前で、片桐はちらりと反対側の席にいるカップルに目を向けた。
「ちょっと、ほんとに大丈夫なのかしら。深成ちゃん、飛び出して行っちゃわないかな」
「ていうかさ、あの人、ほんとに……?」
反対側の少し離れた席でぼそぼそと喋っているのは、あきと捨吉だ。
片桐は前で俯く深成に気付かれないように、あきに軽く手を振った。
「しかし、あの店長もほんとイケメンだよね」
隠れているので、机にへばりつくようにしながら、捨吉が片桐を見て言った。
ちなみにあきも同じように低くなっている。
非常に怪しい二人である。
「オネェだけどねぇ」
言いながら、あきも片桐に手を振り返した。
「つかさ、子兎ちゃん、よく見てよ。あれ、デートかしら? 二人じゃないわよ?」
「え?」
涙目で顔を上げ、深成はそろりと、再び店の奥を見た。
相変わらず真砂は仏頂面だ。
客層が客層なだけに居たたまれないのか、視線は外に向いている。
その横に美女がい、前に誰か座っている。
「普通二人だったら、向かい合わせに座るでしょ?」
「だって、横のほうが近いから、そうしてるんだと思ったんだもん」
「そんな甘やかなことをしてる顔じゃないわよ、あれは」
片桐に言われ、少し深成も落ち着いて真砂を見た。
だがやはり、美女と一緒にいるのだ。
そのとき、真砂たちの前にいた人物が声を上げた。
「どうしても、ですか?」
思い詰めたような声だ。
「ふ~ん? 修羅場かしら」
片桐が耳をダンボにして聞き耳を立てる。
空調の加減か、真砂たちの会話がよく聞こえる。
実はそれも調査済みで、片桐がここに陣取ったのだが。
「……才蔵さんは、私に恋人がいるって、こうやって証明しても、そこまで想ってくれるんですか」
ややあって、モデル美女が言う。
ああっやっぱり! やっぱり恋人なんだー! 真砂、二股かけてたー! と、深成の目から鉄砲水のように涙が噴出する。
ぎょっとした片桐が、慌てておしぼりで深成の顔を押さえた。
「ちょ、ちょっと。とにかく落ち着いて。落ち着いて、最後まで聞いて頂戴」
「やだ~! だってもう決定的じゃんっ! うえーん、真砂の馬鹿ーーっ! 嫌-いっ!!」
立ち上がり、深成は真砂に向かって叫んだ。
それに、誰より反応したのは真砂である。
強張った顔で、がた、と立ち上がった。
「み、深成っ……」
「真砂の馬鹿っ! 浮気者~~~っ!! 大っ嫌い!!」
ぼろぼろと涙を流しながら叫び、だっと駆け出していく。
真砂がすぐに追おうとするが。
「駄目ですよっ! 課長、社長命令!」
ぱっとあきが飛び出し、真砂を制する。
その間に、片桐が深成を追った。
「どけよ! 命令なんか知ったことか!」
「駄目ですっ! ていうか課長、何であたしたちがここにいるのかを考えてください! 深成ちゃんのことは大丈夫ですから、とにかく今は、当初の目的を果たしてくださいっ!」
いつものあきらしからぬ強い態度で言い、真砂の出鼻を挫く。
ここ一番のときのあきは結構強い。
さすがの真砂も口を噤んだ。
「あ、あの。とりあえず出ませんかね」
おずおずと、捨吉が伝票を二枚(片桐たちのと自分たちの)を持って、店内を示す。
忘れていたが、ここは土曜のティータイム真っ只中のお洒落喫茶だ。
店内の客(しかもほぼ女子)全員の注目を集めている。
「そうね。ここじゃ落ち着いてお話もできないわ。てことですみませんけど、場所を移しましょうね」
てきぱきと場を仕切り、十割何が起こっているのかわかっていない男性と、五割わかっていない真砂とモデル美女を連れて、あきはさっさと店を出た。
これ以上騒ぐことはないだろうが、だだっ広い公園につくと、あきは真砂にぺこりと頭を下げた。
「課長の心配はごもっともです。でも大丈夫。深成ちゃんのことはこちらに任せて、課長はお話が済んだら大人しく家で待っててください。社長の見立てに間違いはありませんよ」
そう言って、真砂が何か言う前に、捨吉と共にその場を去った。
「おうっ!」
何だかテンションの高い片桐に連れられ、深成は町に繰り出した。
お洒落なパンケーキ屋さんで朝食を食べ、可愛い雑貨屋さんを回る。
ランチを採った後は、巷で人気のカフェでお茶。
「はぁ~。ここのパフェ、食べてみたかったんだ~」
「人気なんだから、それこそ彼氏と来たりしないの?」
「だってここ、この状態だもん」
深成が、つい、と周りを示して言う。
ここはパフェの種類が豊富な店だけあり、女子に大人気だ。
自ずと店内は女子ばかり。
こういうところでも浮かない片桐はつくづく凄い。
「さすがに真砂は嫌がるもん。それでなくても、こんな女の子ばっかのところに真砂を入れたら、周りの目が大変……」
言いつつ視線を滑らせていた深成の目が、ある一点で止まった。
今しがた言っていたように、周りの目もそこに集まっている。
店の奥に、やたらと浮いた男がいる。
仏頂面だから余計だ。
「ま、真砂……」
奥にいたのは真砂である。
そして、その横には、あのモデル美女。
「ん? ……へ~ぇ。あれが噂の、子兎ちゃんの彼氏? なるほど、確かにいい男ねぇ」
片桐が、呑気に手を翳して真砂を見る。
「真砂……。今日はデートだったんだ。こんなとこ嫌がってたのに、あの人のためなら入るわけ」
無理やりとはいえ、折角楽しく過ごしていたのに、最後に一番嫌な場面に出くわしてしまった。
何で、と俯く深成の前で、片桐はちらりと反対側の席にいるカップルに目を向けた。
「ちょっと、ほんとに大丈夫なのかしら。深成ちゃん、飛び出して行っちゃわないかな」
「ていうかさ、あの人、ほんとに……?」
反対側の少し離れた席でぼそぼそと喋っているのは、あきと捨吉だ。
片桐は前で俯く深成に気付かれないように、あきに軽く手を振った。
「しかし、あの店長もほんとイケメンだよね」
隠れているので、机にへばりつくようにしながら、捨吉が片桐を見て言った。
ちなみにあきも同じように低くなっている。
非常に怪しい二人である。
「オネェだけどねぇ」
言いながら、あきも片桐に手を振り返した。
「つかさ、子兎ちゃん、よく見てよ。あれ、デートかしら? 二人じゃないわよ?」
「え?」
涙目で顔を上げ、深成はそろりと、再び店の奥を見た。
相変わらず真砂は仏頂面だ。
客層が客層なだけに居たたまれないのか、視線は外に向いている。
その横に美女がい、前に誰か座っている。
「普通二人だったら、向かい合わせに座るでしょ?」
「だって、横のほうが近いから、そうしてるんだと思ったんだもん」
「そんな甘やかなことをしてる顔じゃないわよ、あれは」
片桐に言われ、少し深成も落ち着いて真砂を見た。
だがやはり、美女と一緒にいるのだ。
そのとき、真砂たちの前にいた人物が声を上げた。
「どうしても、ですか?」
思い詰めたような声だ。
「ふ~ん? 修羅場かしら」
片桐が耳をダンボにして聞き耳を立てる。
空調の加減か、真砂たちの会話がよく聞こえる。
実はそれも調査済みで、片桐がここに陣取ったのだが。
「……才蔵さんは、私に恋人がいるって、こうやって証明しても、そこまで想ってくれるんですか」
ややあって、モデル美女が言う。
ああっやっぱり! やっぱり恋人なんだー! 真砂、二股かけてたー! と、深成の目から鉄砲水のように涙が噴出する。
ぎょっとした片桐が、慌てておしぼりで深成の顔を押さえた。
「ちょ、ちょっと。とにかく落ち着いて。落ち着いて、最後まで聞いて頂戴」
「やだ~! だってもう決定的じゃんっ! うえーん、真砂の馬鹿ーーっ! 嫌-いっ!!」
立ち上がり、深成は真砂に向かって叫んだ。
それに、誰より反応したのは真砂である。
強張った顔で、がた、と立ち上がった。
「み、深成っ……」
「真砂の馬鹿っ! 浮気者~~~っ!! 大っ嫌い!!」
ぼろぼろと涙を流しながら叫び、だっと駆け出していく。
真砂がすぐに追おうとするが。
「駄目ですよっ! 課長、社長命令!」
ぱっとあきが飛び出し、真砂を制する。
その間に、片桐が深成を追った。
「どけよ! 命令なんか知ったことか!」
「駄目ですっ! ていうか課長、何であたしたちがここにいるのかを考えてください! 深成ちゃんのことは大丈夫ですから、とにかく今は、当初の目的を果たしてくださいっ!」
いつものあきらしからぬ強い態度で言い、真砂の出鼻を挫く。
ここ一番のときのあきは結構強い。
さすがの真砂も口を噤んだ。
「あ、あの。とりあえず出ませんかね」
おずおずと、捨吉が伝票を二枚(片桐たちのと自分たちの)を持って、店内を示す。
忘れていたが、ここは土曜のティータイム真っ只中のお洒落喫茶だ。
店内の客(しかもほぼ女子)全員の注目を集めている。
「そうね。ここじゃ落ち着いてお話もできないわ。てことですみませんけど、場所を移しましょうね」
てきぱきと場を仕切り、十割何が起こっているのかわかっていない男性と、五割わかっていない真砂とモデル美女を連れて、あきはさっさと店を出た。
これ以上騒ぐことはないだろうが、だだっ広い公園につくと、あきは真砂にぺこりと頭を下げた。
「課長の心配はごもっともです。でも大丈夫。深成ちゃんのことはこちらに任せて、課長はお話が済んだら大人しく家で待っててください。社長の見立てに間違いはありませんよ」
そう言って、真砂が何か言う前に、捨吉と共にその場を去った。